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このSF SSはわしが書いた〜自慢スレッド

1 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/27(水) 22:51:37 ID:Ljdlwzcw
SF系のSS書いて論評でも文句でもいいから書き込め
ただし当てこすりはダメ

290 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/09(木) 16:19:59 ID:JGvbrNJF
空気読まず投下ます

コルチゾールの輪唱(1/4)

 二度目の仕事が完了した。
 私は右手に絡む黒褐色の液体を舐めてみた。味覚の代わりに分析用のセンサが構成物を判断する。ブドウ糖成分が多いようだが、その他はおおむね知識と一致している。個人差があるのだろう。
 血は赤いものだという知識を与えられているが、視覚情報とはあまり一致しない。粘ついて、泥臭く、RGB値で近似しても茶色のカラーパレットに近い。
「回収が完了した。――行くぞ、二号」
 私はマスターに頷いて、その場を後にした。

 私の人格は人工物である。
 私の脳は、脳死した女性を基盤としたクローン脳を死刑確定者の脳漿で培養したものだ。
 知識は連続断像立体焼き付けという技術でニューロンに紐付けされている。
 訓練によりシナプスを発達させるヒトと比べて圧倒的に情報量が少ない代わりに、物忘れは少ない。
 そして私の脳は、焼き付け技術の限界から、半年も経たずに脳死する運命にある。
 マスターは私のメンテナンスを終えて、私の四肢から鍼を外した。
 私の横には、二ヶ月前に死んだ「一号」が横たわっている。

291 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/09(木) 16:20:29 ID:g+uNVwfh
なんかクランチ文体とか言う、直感的にイメージを取り込める文章表記らしいぞ
俺の贔屓作家が一時期真似してて大層困ったのを覚えている

てかクランチでうまくやるのは相当難しいよな

292 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/09(木) 16:20:53 ID:JGvbrNJF
コルチゾールの輪唱(2/4)

「二号。お前は死を畏れているか」
「いいえ」
「キャシーの記憶は転写されたのだろう」
「わかりません、マスター」
「一号のように自殺しないでおくれよ。お前にはまだ、役割があるんだ」
「はい、マスター」
 私の人格は、マスターの娘であるキャサリン――彼の言うキャシーの脳核クローンに、彼女からスキャンアップしたシナプス情報が焼き付けられている。
 言語化も記号化もできない雑多な感情は、スキャンの際に失われている。
 アンドロイドの私見で考察する限り、その失われた情報こそが、人間が人間であるためにもっとも必要な情報なのだろう。
 私に不安はない。
 目的もない。与えられた役割に疑問もない。
「キャシーは腹部にショットガンを撃たれて無惨な死を遂げた。君のその手で、キャシーの仇を討ってくれ」
 私は頷いた。
 私は、キャサリンを殺した人間を捜すために、マスターによって作られた。
 私はマスターに命じられるまま、キャサリンが死ぬ間際の記憶に該当しそうな人物像を、可能な限り洗い出した。
 マスターは可能性の濃そうな人間を次々と殺し、彼らの脳を回収して、スキャンアップした。
 マスターはご自身の開発した技術に絶対の自信を持っている。

 三人目を捕獲する計画が始まった。
 私の記憶の中で、かなり鮮明なイメージと共にキャサリンを振った男である。
 だが、殺意の動機に繋がりそうなシナプスが皆無なので、優先順位を下げていた対象だ。
「調べてみたらこの男、キャシーと交際している間に他の女と入籍してやがるんだ。
 くそっ、この情報がもっと早く出ていれば、無意味な殺人が不要だったろうに」
 私は危ぶんだ。今回もまた、無意味な殺人になりはしないか。
 その男に対して、キャサリンの記憶は美しいままだ。
 ただ一つ、悲しさという「記号」に結びついていた。

293 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/09(木) 16:22:04 ID:JGvbrNJF
コルチゾールの輪唱(3/4)

 ――記号化された記憶だけではキャサリンの本当の記憶は追えないだろう。
 エンドルフィンやドーパミンの断絶具合はどうだったのか。
 コルチゾールやアドレナリンは分泌されていたのか。
 そういった正確な情報がなければ、記憶なんてものは物語に過ぎない。
 ヒトは容易く感情を記号化する。
 科学が発達しても、彼らは何も学ばない。
 毎日のように怒り、妬み、苦しみ、恋愛劇を繰り返す。
 他人を理解したいのならば、なぜ脳内物質の分泌量の定点観測を習慣付けないのだろう。
 犯罪を畏れるならば、なぜポリグラフ機器や嘘発見機の装着を義務づけないのだろう。
 どうやら、ヒトは感情というものを神聖視しているようだ。
 それは観測出来る物なのに。
 
 私たちは非合法的な武装を周到に準備して、その男を廃ビルの一角に追いつめた。
 その男は私を見て、「キャシー」と呟いた。
 私は彼の腹部にショットガンを放った。

294 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/09(木) 16:23:09 ID:JGvbrNJF
コルチゾールの輪唱(4/4)

 そのとき私は、新しく一つのシナプスが繋がった事を確認した。
 ――ああ。マスター。やはり無意味な殺人だったようです。
 私はショットガンを自分の腹部に据えた。

 ――もしくは、ヒトの感情は観測し切れる物ではないのかもしれない。
 ある側面において、忘却と隠蔽もまた、人格の本懐なのかもしれない。
 キャサリンの記憶は、こんなにも強固に、彼の事を隠蔽し続けていたのだ。
 
「二号。君も自殺したのか。なぜだ」
 肺が潰れているので、私は応えられない。
 何故、マスターは泣いているのだろう。
 キャサリンを殺した相手が判ったから

 命令通り、

 この

 手で

-fin-

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取りに行ったけどなかった。次は一時間後に取りに行くです。
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